黄色ブドウ球菌による乳房炎の防除
黄色ブドウ球菌は伝染力が強いうえに治療が困難なため、一度牛群に蔓延すると、乳量の減少や乳牛の淘汰など、様々な経済的損失を引き起こします。
1.黄色ブドウ球菌の特徴
黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス アウレウス:以下SA)は次に示すような特徴を持っています。
- 傷やただれ等に繁殖
- 強い伝染力をもつ
- 感染牛の乳汁に存在し、搾乳者の手、乳頭清拭タオル、ミルカーを介して牛群に伝染
- 乳頭内でしこり(バリア)をつくり、薬が効きづらい
- 大腸菌性乳房炎などとは異なり、急激に体細胞数は上昇しにくい(おおよそ20~100万個/ml)
2.SA乳房炎対策
①実態把握
バルク乳スクリーニング検査を行い、SAに感染している牛が存在するか確認しましよう。
バルク乳スクリーニング検査でSAが陽性の場合は、どの個体や分房がSAに感染しているか乳汁検査で特定します。
また乳検成績で、3ヵ月以上連続して体細胞数が高い牛も、SAに感染している可能性が高いです。
②治療
初産・二産牛であれば治癒する可能性があります。
特に乳腺組織が再生する乾乳期は治療効果が高い傾向にあります。
③淘汰
SAは治療してもなかなか直りづらいため、慢性牛の淘汰や感染分房の盲乳を検討しましよう。
※治療・淘汰に際しては、農協担当者やNOSAI獣医師と相談してください
④予防
SA牛を最後に搾乳
SAはミルカーを介して牛群に伝染していきます。
SAに感染している牛を最後に搾乳し、新たな感染を防ぎましょう。
搾乳手袋の使用
搾乳手袋は表面が滑らかで、素手に較べ汚れが落ちやすいため、手を衛生に保ち、人間からの感染を防ぎます(図1)
一頭一布
一枚のタオルを使い回すことは、SAを牛群に伝染させることに繋がります。
搾乳頭数以上のタオルを川意しましょう。
過搾乳の防止
最後の一滴まで搾ろうと、いつまでもミルカーを掛けていると過搾乳となり、乳頭口が開いたり、突出・ひび割れするなど、乳頭先端が傷つきます(写真1)
ポストディッピング
乳頭口を殺菌・粘膜保護のため、ミルカー離脱後、直ぐに乳頭をしっかりとディッピングしましょう。
ノンリターンタイプのディッパーは、薬剤を使い回さないようにしましよう。
スプレータイプは、乳頭全体に薬剤がかかるように注意しましよう(図2)。
内容に関してご不明な点がありましたら、普及センターまでご連絡下さい。(平成25年11月)