普及センターコーナー

乾乳牛の管理について
~「ストレス」低減で分娩後の疾病を減らそう~

 経営に必要な出荷乳量を達成するにはそれに見合った経産牛頭数が必要です。
 しかし計画に達成しない場合の理由の一つは経産牛の死廃率が高いことです。
 下図は普及センター管内のある地域において、分娩前後に疾病を発生した牛が分娩後二か月間でどれだけ除籍されたかを示したものです(共済調査)。

平均死廃率の違い

 死廃率が高い農場では生産性の高い時期に淘汰される頭数が多く、出荷乳量を減らしていると考えられます。
 分娩後に疾病が起きる原因の一つは、様々なストレスが牛に加わることによって分娩前の喰いが落ちることだといわれています。
 どんな時に牛たちはストレスを受けているのでしょうか。

1.腹が減ってつらい

 搾乳を中止して一週間過ぎたころからはサイレージ主体の給与となりますが、よく見ると腐敗しかけていたり、量が不足している場面を見かけます。
 パドックで自由にいても肝心のエサが無ければつらいばかりです。
 この状態が長く続くと、牛は大きなストレスを受け分娩前に喰いが落ちることが考えられます。
 大切なのは飽食させ、満足感を与えることです。

乾乳牛達

2.寝起きするのがつらい

 胎児が大きくなってくると牛の動作は緩慢になります。
 食欲は自然と減退し、乾物摂取量が減少します。
 この時期に大切なのは寝起きしやすい牛床であることです。
 また分娩直前には寝起きを繰り返して胎児の体位を変えて分娩に備えます。
 寝起きしやすいことは分娩後の疾病を防ぐために必要な条件です。

タイストール

3.移動が多くて落ち着かない

 牛達は「乾乳」、「分娩」を迎えて移動を繰り返しています。
 移動によって環境が変化すると牛は慣れるのに時間がかかります。
 分娩十日前には分娩させる場所に移動を完了させましょう。

4.一頭ではさびしい

 分娩房の設置場所はとても重要です。
 人が観察しやすいことはもちろんですが、分娩する牛が他の牛達を身近に感じられる場所が良いでしょう。
 塔型サイロを改造した分娩房の事例で、他の牛達が見えず、食欲が急に落ちてしまった牛を見たことがあります。
 分娩房を使用する時は、牛を孤立させないように注意しましょう。

分娩室の場所

 このように、乾乳牛達にかかるストレスは人の管理によって和らげることができます。
 分娩を事故なく終えた牛達はきっと農業者皆さんの期待に応えてくれるに違いありません。

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