低乳脂率対策
乳脂率が低いという相談を受けることがあります。
乳脂率は牛群の健康状態の目安になり、また、乳価を決める要素ともなります。
そのため、適度な乳脂率を維持することは経営にとって重要です。
今回は乳脂率が下がる要因と、その対策についてご紹介します。
1.乳脂率低下の要因
乳脂肪は酢酸や脂肪酸を原料に乳腺細胞で合成されます(図1)。
酢酸は主に繊維がルーメンで発酵した後の産物です。
また、脂肪酸は飼料中の脂肪源がルーメンで変化したものです。
これらの供給が不十分だと、乳脂率が下がります。
その要因として、次のことが挙げられます。
①繊維の摂取量が不足すると、酢酸の生成量が減ります。
②穀類過多(ルーメンアシドーシス)になると繊維分解微生物の活動が弱まり、酢酸の生成量が減ります。
③脂肪源がルーメンで脂肪酸に変わる時に、ルーメンアシドーシスの影響を受けると、特殊な脂肪酸が発生します(図中※)。
最近の研究では、その脂肪酸が、乳脂肪の合成を妨げることが明らかになっています。
◎これらの要因を取り除くことが乳脂率の向上には重要です。
2.対策
①十分な繊維量を与える
・放牧草主体で十分な草量が確保できていない場合は、牧区の見直しやロールサイレージを併給するなどで対応しましょう。
・サイレージの変敗がみられる場合は、給与量の調整、代替飼料の併給、糖蜜等を使用し、繊維の摂取量を確保しましょう。
②ルーメンアシドーシスの予防 ・過密飼養の解消や暑熱ストレスの軽減により、採食行動が安定します。
・適切な粗濃比の確保や重曹の利用(写真1)、TMRの選び食いの防止、良質粗飼料の給与により、予防効果は高まります。
③バイパス脂肪酸の給与 ・ルーメン発酵の影響を受けずに、脂肪酸が乳腺細胞に供給されるので、乳脂率を高める効果が期待できます。
3.改善事例
乳脂肪が低かったA農場では、ルーメンアシドーシスの兆候がみられました。
給与直後のTMRと残飼を専用のふるいでふるうと、上段の割合(粗飼料)が増え、下段割合(穀類)が減る選び食いがみられました(図2)。
そのことがルーメンアシドーシスを起こし、乳脂率の低下にも影響していると考えられました。
そのため、良質乾草を自由採させ(写真2)、ルーメンアしどーシスの軽減を図ったところ、乳脂率の改善がみられました。
句報等で乳脂率の低下がみられる場合は、是非ご参考ください。